それは大学1年の春の事でした。オーケストラのサークルで出会った同級生 のAに一瞬にして心を奪われてしまいました。普段は突飛な行動と発言をする 可愛い女の子、しかし合奏で楽器をひく彼女は物憂気な美人。そのギャップも また彼女の魅力の一つでもありました。そんな彼女は当然楽団の人気者でライ バルも多数…。しかし私は周りの目を来にせず、いや牽制するかのようにハッ キリとしたアプローチをかけたのでした。そして初夏、相談した彼女の親友達 からも「Aも満更ではないみたいよ」と聞き、遂にシューレビーメーカー彗星 が木星に衝突した日の夜、彼女をアパートへ送ったときに打ち明けました。 「君が好きだ」と… しかし彼女からかえって来た言葉は 「えぇ〜、こまっちゃう〜」 思いもしないリアクションをとられ呆気にとられている私にAは 「う〜ん、はっきりいいます。私、他に好きな人がいるの。 ○○君は、友達としては、好き、大好きなんだけど〜」 その後の言葉はもう覚えていません、気がついたら家に帰っていました。 ただそのときにあったのは、自分の鈍感さへの怒りだけでした。 そうして私の初めての夏は終わったのです。 それから3年、私は大学4年になっていました。志望大学院にも 合格し、幸せを味わっていた私の心に唯一残った引っ掛かり、 それは彼女が誰を想っていたのかでした。 私は既に2年の時にサークルを辞めており、その後のAがどうなったかは 知らなかったのです。 その間にも幾つかの恋があったのですが、やはり気になっていたのです。 ひさしぶりに当時の後輩と飲んでいたら、Aの話題が出てきました。そしらぬ 顔で聞いてみると、意外な人物でした。脳裏を巡る彼女と彼の関わり、言動、 表情…。そして納得…。 その夜、部屋に戻った私は、一人日本酒をあけながら、呟いたのです。 「やっと終わったね」 と。 その日の夜空は澄み渡り満天の星々。東の空にはシリウスが輝いていました。 私を励ますかのように。