「疲れたの」


それは僕の誕生日の夜の出来事。

その日遠い気分だった僕は、家に帰りたくないから

会社の近くにある友人宅を訪れた。


その部屋にはギターがあった。ただずっとギターを弾く僕。

ふと机の上を見ると、遠距離恋愛中の彼女の写真があった。

不似合いな田舎の風景の中で、二人とも笑顔だった。




僕は友人に尋ねた。



「どうよ彼女は」




友人は答えた。



「別れた。」

「他に男ができたって。」

「遠距離に疲れたって。”やっぱり遠くの彼氏より近くにいる人”がいいんだって。」




...そうか。

君の唯一の宝物だったのに。





僕は聞いた。


「そっか。最後の言葉は?」




友人は答えた。



「『疲れたの』って。」






場を埋める哀しげな雰囲気。僕は黙って彼にギターを渡す。

アコギが泣いていた。





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